22. 顔の表情筋と呼吸法

プロドラマーS氏顔A

 どんなに複雑で難解なフレーズでも“冷静かつ余裕のある顔つき”で平然と演奏する…

 もしあなたが少しでもそんな理想を抱いているのなら考えを改めた方が良いかも知れません

 超一流ドラマー達の「バンド演奏中の顔つき」を見て下さい。身体は完全脱力しているのに何故か「顔つきだけに力が入っている」ことに気付くはずです。

 特にスティーヴガッドなどはかなり険しい顔つきで演奏を行うため、「こんなに演奏力があるのに、あそこまで真剣にドラムに向き合うその精神力が凄い!」などと感心している人も多いのではないでしょうか?


プロドラマーS氏顔B

 しかし彼等のその顔つきの理由はそんな“精神論”的なものではありません。ドラミング呼吸法を用いた際に起こる、むしろ“物理的な理由”によるものなのです

 彼らの演奏中の顔つきに共通して言える特徴は「唇」と「頬」の内側に力を入れている事です。これはクラシック系の管楽器奏者が演奏時に使っている表情筋の状態と酷似しています。

 管楽器はその性質上、肺の中の空気を全て吐き切るまで音を出さなければなりません。それと全く同様に、呼吸法を用いてドラミングを行う場合にも“肺の中の空気を全て出しつくして歌う”事が音楽表現の重要なポイントの一つとなっています。


プロドラマーS氏顔C

 その際「口内でのスムースな空気の流れ」を作り出すため、唇と頬の表情筋を使って“息のコントロール”をする結果、顔つきだけに力が入らざるをえないのです。

 つまり、彼らと同種類の呼吸法を使った音楽表現を“冷静かつ余裕のある顔つき”で行う事は「物理的に不可能」なのです。

 だからといって、やみくもに顔に力を入れたり、口を丸く開いたり等の“スポーツ的な顔つき”でも呼吸法は不可能です。その表情筋の使い方では気管が広がってしまうために身体が「過酸素気味の状態」となり、全身に力みが走って音楽表現どころではなくなってしまうからです。


超一流ドラマー達が行う「ドラミング呼吸法」は、顔の表情筋までを有効利用して、
あの独特な音楽表現を醸し出しているのです。
(写真はドラミング呼吸法で演奏する当スクール生達です)
佐藤扶由夫さん顔D 佐藤扶由夫さん顔E

(1999年4月)