42. フリーグリップと、しゃっ骨&とう骨
(2004/02/15アップ。17修正)
いきなりですが、まず次の動画をご覧下さい。
| 動画:デニス・チェンバース式 超高速シングルストローク ![]() ★画像をクリックして下さい★ (MPEG-1 480Kbps 1.08MB) 動画がうまく見れない場合は… |
この動画の中で行われている32分音符の高速連打は、全てシングルストロークで行っています。スティックがほとんど振り上がっていないにも関わらず、パワーが出ているのがお分かりいただけるでしょうか?(あえてシングルストロークの時はリムショットを使用していません)
この動画はK's MUSIC主宰の小野瀬健資が、デニス・チェンバースの肘から先にある、しゃっ骨、とう骨と、5本の手の骨の使い方を再現して演奏したものです。
主宰の小野瀬は普段このようなドラミングは全くしませんが、ドラミングアドバイスの為にあえて再現してもらいました。
ここで言う「再現」とは、見た目のフォームやラインを真似するというものではなく、体内再現、つまりは、骨や関節や腱の使い方、さらには重心位置等の体内で起こしている運動を再現化するという、極めて人体力学的な再現方法です。
このような超高速シングルストロークを習得する場合、日本では、やれ手首のスナップ強化が必要だの、シングルストロークで使われる筋肉を鍛える事が必要などという、鍛錬系の発想で方法論が説かれていますが、その方法論でパワーとスピードを両立できたドラマーは果たして本当にいるのでしょうか? デニス・チェンバースも小野瀬も、ツライ鍛錬を積んで死ぬほど練習をして(笑)このようなプレイを可能にしたのでしょうか? デニス・チェンバースは、巨漢で筋力が相当強いから、このようなプレイが可能だと思いこんでいる人が多いようですが、実際は身長160センチほどのとても小柄な人です。(間近で彼を見たことがある人は、あまりのギャップにびっくりしませんでしたか?) 彼の場合、13インチのスネアを中心にして、12インチのハイハット、メインタムは10インチはおろか8インチを使用することも多いので、ビデオ等では遠近感が狂って(笑)身体がとても大きく見えてしまうだけなのです。 ちなみに小野瀬は「これはモーラー奏法の応用だから、筋肉や手首のスナップは全く関係ないよ~」と笑って、練習もせず、ほんの2テイクで撮影は終了しました。 今回はデニスチェンバースの十八番フレーズのタネ明かしをしてしまって、彼には大変迷惑な話かもしれませんが(笑)、しゃっ骨&とう骨の動きを中心に、前回のフリーグリップの応用を解説していきたいと思います。 |
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読み進める前にお願いですが、まだ前回のドラミングアドバイス「フリーグリップシステム」を読んでいない方は、必ず読んでから今回の内容を読み進めてくださいね!
今回のキーワードは「フリーグリップ・システム」における
肘から先の骨の使い方です。
| ■STEP1「前腕部って、ど~なってるの??」 |
デニス・チェンバース式の高速シングルストロークを行うには、前腕部をどう使うかということが重要になってきます。
あなたは前腕部の構造を正確に把握していますか?
| 前腕部の骨格構造を誤解していませんか? | ||
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もしかして、今まで写真1や2のように誤解していませんでしたか? 前腕部には「しゃっ骨」と「とう骨」という2本の骨があり、あなたがスティックを持って構えただけで、その2本の骨は交差して、ねじれているのですよ!
つまり、日本国内で正しいとされている
スティックをまっすぐ振り下ろす奏法 = しゃっ骨・とう骨をねじって固定したまま叩く
ということがお分かりいただけると思います。
ですから、その根もとである「ヒジ」もしくは、先端部である「手首」に物凄い負担がかかってくるのです! 逆に言えば、しゃっ骨・とう骨のねじりを固定させる筋肉を鍛えない限り、通常のプレイさえつらくなります。そのつらさを克服する為には、さらにつらさを伴う練習やトレーニングに膨大な時間を割かなければなりません。
(ドラムに必要な筋肉は日常生活では鍛えられない、と国内では正論立てられてしまうのも無理はないですね!!)
このしゃっ骨・とう骨という二本の骨をねじって固定したまま動かしてしまっては、肘から先をリラックスさせることは絶対に出来ません。リラックスさせるためには、しゃっ骨・とう骨を固定せず、自由に開放してあげる事が必要なのです。
(もし、それでもあなたの先生が「真っ直ぐ叩け」と言うならば、その根拠を聞いてみてください。もしかしてその先生は宇宙人で前腕に骨が一本しかないのかもしれませんね(笑))
Q.骨格図等を見ると2本の骨は平行になっているけど?A.その骨格図の「手」はどうなっていますか? 手の平側が前になっていませんか? 手の平が前になっているのなら2本の骨は平行で良いのです。逆に、手の甲が前になっている場合は2本の骨が交差しているはずです。 私たち人間は、しゃっ骨・とう骨という2本の骨を交差させなければ、手の甲を上向きには出来ません。ぜひ確認してみて下さい。 |
●ここで実際に、ご自身の腕を触りながら、しゃっ骨・とう骨の存在と、その位置関係を確認してみて下さい。
まずここでは、小指側につながっているのが「しゃっ骨」、親指・人差し指側につながっているのが「とう骨」という事を覚えてくださいね。
| 手の平を上にしたり、手の甲を上にしたりしてみて下さい。 貴方のしゃっ骨と、とう骨は、写真のように回転を繰り返すはずです。 | ||
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<注意!!>この時注意してほしいのが、必ず、しゃっ骨を軸として回転させるということです。これを身に付けるにあたって、まずは上の写真のようにテーブルの上にヒジまで乗せて、小指側のしゃっ骨を軸にして反転させる練習をしてみましょう。 これを親指・人差し指側の、とう骨側から外側へ押す動きと勘違いしている教本等をよく見かけます。(例えばスネアとフロアタムの往復移動等)こうしてしまうと、上腕骨との連動がなくなり、ドラムをプレイするどころではありません。(なにより、痛いですよ!) | ||
あなたの前腕は、しゃっ骨と、とう骨という2本の骨が存在しているおかげで、回転運動を行う事が出来るのです! 我々人間は、缶ジュースを飲んだり、箸やフォークで食べ物を口に運ぶ時など、なにげない日常の生活の中で誰でもしゃっ骨を軸に、とう骨を回転させて生活しているのですよ!
■人体力学トリビア:しゃっ骨とう骨・ねじりと開放空手やボクシングのパンチでは、しゃっ骨・とう骨を平行にして構え、当てる瞬間にねじる事で大きな打撃力を得られます。一方、空手の手刀は、しゃっ骨・とう骨をねじって力を溜め、当てる瞬間に開放する(平行に戻す)事で大きな打撃力を得ます。他にも、野球のバッティングやゴルフのスイング、卓球のラケットを振る動作にも、しゃっ骨・とう骨の「ねじりと開放」による力が利用されているのです。 |
| ■STEP2 スティックをもってみましょう! |
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次に、しゃっ骨・とう骨の回転でドラミングを行うための、具体的なグリップについてです。
次の写真をご覧下さい
| よく教則本等で見られるグリップ | フリーグリップ | |
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| フレンチグリップ (手の平側から撮影) |
| ![]() ※ちなみにバディ・リッチは、このグリップを アメリカン、ジャーマン、逆手にも使います |
| アメリカングリップ |
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| ジャーマングリップ |
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| 特徴 | 骨格を考えず、ただ腕のラインに真っすぐにするため、手首が不自然に曲がってしまい、回転運動は不可能になる。 | しゃっ骨・とう骨の回転は、しゃっ骨が軸となるため、小指側を真っすぐにする。 |
フリーグリップと骨の関係は以下の通りです。
| フレンチグリップ | アメリカングリップ | ジャーマングリップ |
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けっして、これらのグリップを“難しい”グリップと思わないで下さい。なぜなら、力を抜いて手首を自然体にしてスティックを持てば、結果的に、こういうグリップになるのですから。
難しいと思うのは、すでに日本の多くのドラマーが間違った方法に毒されてしまっているからではないでしょうか? まずは今までの間違った先入観を捨て去りましょう!
| 日本的奏法にご用心 | |||||||
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まずは、このような考え方を改めることから始めて下さい。人間はロボットではありません。もっと複雑な構造をしているからこそ、人間らしい、しなやかで優しい動きが出来るのですよ! アームショット、リストショット、フィンガーショットなどのように、別々に分けて考えられないのです! 繰り返しになりますが、日本的奏法のように、ひじの屈伸運動で叩いてしまっては、しゃっ骨・とう骨を利用する事もできませんよ。
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さて、しゃっ骨・とう骨の回転で叩くグリップの代表例を上げましたが、ここで思い出して欲しいのが、前回の内容にあった、「スティックと手にかかる慣性モーメントを最大限利用するためには、ワンモーションの中でも(一打単位でさえ!)手の形は必ず変化する必要がある」ということです。
ですので、今回紹介した写真の形を死守(?)して叩くなどという勘違いは、けっしてしないで下さいね!
こんな時代だからこそ要注意!昨今、デイヴ・ウェックルやスティーヴ・スミスに続いて、パット・トーピーもモーラー奏法を取り入れた事もあり、モーラー奏法やフレディ・グルーバー・システムが日本国内でもさらに注目を集めて来ているのは大変喜ばしいことですが、ただ安易にスティックのライン等を教えている、勘違いな“日本式(?)モーラー”を見かけるので、充分注意して下さいね! 最近K's MUSICに入校された生徒さんからだけでも、この3例の報告を受けています!ケース1:腕を開いているだけで、上腕骨・しゃっ骨・とう骨の回転が見られない“日本式モーラー奏法”
しゃっ骨の回転運動がないため、4分音符しか叩けなくなってしまう例。ポンタさんの「8の字スティックワーク」を誤解してしまうと、こうなるので要注意!! ポンタさんの奏法は、そんなに甘いものではありません! ケース2:フレンチグリップから、いきなりジャーマングリップでヒットしている“日本式モーラー奏法”
しゃっ骨を軸として前腕部が回転していないため、スピードばかりかパワーまでダウンしてしまう本末転倒な例。デイヴ・ウェックルの教則ビデオを誤解して練習すると、こうなるので要注意!! ケース3:手首→ヒジ→肩関節という順番で身体動作を行なう“日本式モーラー奏法”
ダンス要素の強いコースタイルのモーラー奏法を、そのまま安直にドラミングに応用しようとした例。手首をひねった際に、相当な負担がかかってしまうので要注意!! この数年だけで、これだけの日本式モーラー奏法が生まれてしまいました(涙)。最近当スクールに入校された生徒さんからだけでも、このような報告を頂いているので実際にはもっと沢山の日本式モーラーが生み出されてしまっている危険性がありますので、注意して下さい! また、レッスンプロの中には、モーラーがわからなかったり、自分が実演出来ないのを「君にはまだ早い!」という一言で隠す人もいるそうで、ドラミング無料相談にSOSも殺到しています。 だまされずに、自分の目と耳で判断して下さいね。 |
| ■STEP3 バディ・リッチの秘密 |
それでは、ここで次の動画をご覧下さい。
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これはバディ・リッチが、彼の楽団の名曲『ウエストサイド・ストーリー』の後半部に必ず行う、バディ・リッチ十八番の、全編シングルストロークによるドラムソロの再現です。 このシングルストロークに隠された秘密に気付けましたか? フレンチ・アメリカン・ジャーマンと一般的に言われる、どのグリップで演奏しているように見えたでしょうか?(日本的奏法の、フレンチ・アメリカン・ジャーマンで考えないで下さいね!) 答えを言ってしまうと「すべて」です。振り上げと振り下げで、グリップは多種多様に変化するのです。 ですので、本来はフレンチ・アメリカン・ジャーマンという考え自体を持たない方が良いのですが、わかりやすく説明するために、便宜上使う事とします。 |
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次の表をご覧下さい。
| しゃっ骨・とう骨の回転とグリップの変化 |
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このように、しゃっ骨・とう骨の回転を使う事で、グリップは多種多様に変化するのです。そしてバディ・リッチは、その原理を使っているために、スティックワークが見た目には派手にならざるを得ないのです。
しかし、ここまで説明をすれば、彼のスティックワークがけっしてショーマンシップなどではなく、実用性重視であることが分かって頂けたのではないでしょうか?
Q.デイヴ・ウェックルが教則ビデオの中でフレンチ→ジャーマンと説明しているけど?A.もう一度、ビデオをよくご覧になって下さい。 |
また、答えを言ってしまうと一番最初の動画のデニス・チェンバースのシングルストロークは、しゃっ骨を軸にして、とう骨を小刻みに回転させて行っているのですよ!
高校の物理で「角運動量保存の法則」を習った人が多いと思いますが、デニス・チェンバースはこの物理を利用して高速スティックワークを行っているに過ぎません。
小刻みに速く動かす場合も、大きくゆっくり動かす場合も、実は物理的なエネルギーは同じなのですよ!
| ■STEP4 実際のプレイに生かしましょう! |
では次の「フレンチ」「アメリカン」「ジャーマン」というすべてのグリップを用いた動画をご覧下さい。
動画:しゃっ骨・とう骨回転利用の実用例![]() ★画像をクリックして下さい★ (MPEG-1 480Kbps 850KB) 動画がうまく見れない場合は… |
この動画は、あえて全編ダブルストロークのみを使ったソロなのですが、その事にお気付き頂けたでしょうか? 通常、このようなドラムフレーズはあり得ませんが、グリップの変化が分かりやすいように、あえて小野瀬に全編ダブルストロークで実演してもらいました。 わざと大げさに実演していますので、どのような回転で行われているか、何度も見て探ってみて下さいね! 今までの内容をしっかり理解すれば、この動画から実際のプレイで使うヒントをたくさん得られるはずです。「自分でわかる」というのは、マスターする上で何より大切な事だと思います。 ただ読むだけで終わっていては、あなた自身のプレイに反映される日は永遠にやってきませんよ! |
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< ま と め >
いかがでしたでしょうか?
しゃっ骨・とう骨という2本の骨の存在を今まで知らなかったという方も意外に多かったのではないでしょうか?
けっして「こう叩かなければならない」というつもりはありませんが、身体がこのように出来ている以上、それを素直に認めて、更にご自身のプレイの可能性を広げてみては?とK's MUSICは考えます。
それでは最後に、これから練習しようという方への注意点を挙げておきますので、参考にしてみて下さい。
― 注 意 点 ―
以上の点に注意してしゃっ骨・とう骨の役割を把握し、「フリーグリップ・システム」へと応用して下さい。 万が一練習していて痛くなった場合は、間違った動かし方をしているか脱力出来ていないのが原因ですので、すぐに練習をやめて下さい。無理に動かして身体を痛めたとしてもK's MUSICでは一切責任を負いかねますのでご了承下さい。 |







