ドラミングアドバイス47 . ドラム人間科学TV  ゴスペルドラミング特集

STEP3 ブーストストローク

 <STEP2>でスティックエンド支点、しゃっ骨&とう骨について解説しましたが、<STEP3>ではドラミング無料電話相談でも多く寄せられる、「ゴスペル系の黒人ドラマーのような爆発力が出せない!」というお悩みに答えていきます。

 その名も "ブーストストローク" です!

■SECTION1 《強い音を出すには?》

普通、強い音を出そうと思うと・・・

真っすぐ叩く奏法

 このように、スピード=パワーという発想で速いストロークで真っすぐ叩くと考えられがちですが、

普通のモーラー奏法

K's MUSICがモーラー奏法普及プロジェクトを立ち上げてからは、モーラーで腕の重さを使って叩くという考えも少し定着しました。

しかし、ゴスペル系の黒人ドラマーのような爆発力を出すには、どちらも物足りないのです。

そこでいきなりですが、次の動画をご覧下さい。

動画:アーロン・スピアーズ風の
フレーズで対比
実演:坂野上貴宏

 これは、ゴスペル系のドラマーの代表格であるアーロン・スピアーズ風のフレーズを、K’s MUSIC講師の坂野上が4つのストロークで実演している動画ですが、

① 真っすぐ叩く奏法 ② 肩から先だけのモーラー奏法 に比べ、

ブーストストローク1ブーストストローク2 の方が、

圧倒的に音圧やスピード感、爆発力がある事がおわかり頂けたと思います。

ブーストストローク1もブーストストローク2も鍵になるのは「動きの途中で加速させる!」という事です。

 それでは早速、この「ブーストストローク」の解説に入っていきたい思います。

■SECTION2 《日本でモーラー奏法と言うと・・・》

  日本でモーラー奏法と言うと・・・

動画:一般的に認知されている
モーラー奏法のイメージ

 こういった感じのプレイになってしまう・・・というイメージが定着してしまっているようです。
そのせいもあってか、身体が楽になったり、リラックスできるのは良いが、「スピード感が無くなる」「プレイがダラダラする」「エネルギー感がなくなる」等の悪いイメージを持ってしまい、 「モーラー奏法はやりたくない!」、もしくは 「手を付けない方が良い」と言われる事も多いようです。

果たして、そんなモーラー奏法で、爆発力を出す事は可能なのでしょうか?

■SECTION3 《回転力を加えるタイミング》

モーラー奏法で爆発力が出せるかどうかは
どのタイミングでスティックに回転力を加えるかにあった !?

 通常、モーラー奏法と言うと、「外側の回転」や「内側の回転」、 その時の「ライン取り」や、「脱力やリラックス」といった事が語られる事が多いですが、 「どのタイミングでスティックに回転力を加えるか?」 という事を 「厳密に!」 考えた事はあるでしょうか?

ここでは仮に

① 振り下ろし始め = スタートポイント

② 振り下ろしの途中 = ミドルポイント

③ 打面に当たる場所 = ヒットポイント

と、します。

 ブーストストローク1は、手首や指などの末端の回転を「わざと」遅らせて、普通の叩き方では決して起きないくらい、スティックを加速させる のがポイントです。例えて言うなら「スティックにターボをかける」ようなイメージです。

 「スティックにターボをかける」には、スタートポイントではなく、"ミドルポイントやヒットポイントの直前"まで 手首や指の回転を遅らせる必要があります

しかし、モーラー奏法に取り組んでいても 腕の落ち始めのスタートポイントで手首や指などの末端が勝手に動いてしまう方が非常に多い のです。

 「ムチのような動きをする」とよく言われるモーラー奏法で「そんな事があるはずがない !!」と思うかもしれませんが・・・

動画:モーラー奏法の盲点

 動画のように、ゆっくりなプレイではムチのような動きを意識できていても、結局 速くなった時には、腕の落ち始めで末端が反応してしまっている方がほとんど です。

もし、野球のピッチングでこうなってしまうと、つまり「投げ始め」で
末端を反応させてしまうとどうなるでしょうか?
動画:野球で例えると・・・

 当たり前ですが、先に末端側が反応しては速い球は投げられないので、1番最後に末端側を使うはずです
これと全く同じように ドラムでも最後に末端を回転させると、

動画:最後に回転させる
ブーストストローク

 いかがでしょうか? 普通の真っすぐ叩く奏法や通常のモーラー奏法のような「初速の維持」ではありえないくらいの加速 を、外側・内側、両方の回転でスティックに加える事が可能 になるのです。

この加速を"続けながら"ヒットするモーラー、
そのやり方こそがブーストストローク1なのです。

■SECTION4 《実演、ブーストストローク1》

 それではここで、落ち始め(スタートポイント)で末端が反応する 普通のモーラーブーストストローク1 の両方を使ったダブルストロークの差をご覧下さい。

動画:ダブルストロークで
普通のモーラーとブースト1の対比
実演:坂野上貴宏

 いかがでしょうか?
ブーストストローク1のダブルストロークの威力がおわかり頂けたと思います。

 また、ゴスペル系の黒人ドラマーにはこういった 粒立ちの良いダブル足のダブル を組み合わせるドラマーも多いです。

動画:手と足のダブルストローク
実演:坂野上貴宏

※フットワークに関してはドラミングアドバイス第44回を参考にして下さい。

それではここで、ブーストストローク1に取り組もうという方に
ワンポイントアドバイスです!

動画:ブーストストローク1の
ワンポイントアドバイス

<STEP1>はコチラをご覧下さい。

■ ブーストストローク1の重要なポイント ■

・手首や指などの末端の回転を意図的に遅らせる事で、通常のモーラー奏法ではありえない加速をスティックに加える

・加速を続けながら、つまり「打面に当たる瞬間」もスティックスピードが上がり続けているのがポイント

・モーラー奏法の応用であるブーストストローク1は内側、外側、両方の回転で使える

※普通の真っすぐ叩く奏法も通常のモーラー奏法も、初速の維持であって厳密にはほとんど加速していない


■SECTION5 《ブーストストローク2って!?》

 モーラーの応用のブーストストローク1の次に紹介する「ブーストストローク2」ですが、具体的なやり方の説明の前に、
まずはこちらの動画をご覧下さい。

動画:普通のストロークに勘違いされやすい
ブーストストローク2

 ブーストストローク2は、手首や肘を使って真っすぐ叩く奏法と勘違いされやすい奏法 なのです。

動画でもおわかり頂けたと思いますが、手首や肘を使って真っすぐ叩く奏法、その弱点は・・・

手首を使ってまっすぐ叩く奏法
肘を使ってまっすぐ叩く奏法

 こうやって前方向にエネルギーが逃げてしまう事なのです。

この「前に逃げるストローク」では打面にスティックが到達する前にエネルギーのピークが終わってしまい、爆発力を出す事はできません。

 でも「アーロン・スピアーズは手首が上がって見えるけど??」と思うかもしれません。そのあたりを坂野上に聞いてみましょう。

動画:手首が上がっても
エネルギーを伝えるためには・・・

 手首が上がっても前方向にエネルギーが逃げないように肩甲骨を使う。それが ブーストストローク2 なのです。


 「エネルギーが逃げないように肩甲骨を使う??」「どういうこと!?」と思われてしまったかもしれませんので、
次の動画で具体的なやり方をご覧下さい。

動画:ブーストストローク2の概要

 この動画のように、「肩甲骨を後ろに引く」事によって、そのままでは 前方向に逃げるはずだったエネルギーを、下方向に変換する事が可能になる のです。

~ Q & A ~

Q.肩甲骨を引くんだったら最初に肩甲骨を引き切っておけば良いのでは?

A.そうしてしまうと、色々と不都合が出てきてしまいます。詳しくは、動画をご覧下さい。

動画:ご質問への回答

このように、最初に肩甲骨を引き切ってしまうと、セットドラミングにおいて色々と不都合が出たり、加速させる事もできなくなってしまうのです。

■SECTION6 《逆の順番!?》

☆ブーストストローク2の一番の特徴☆

逆の順番で動かす !?

K’s MUSICがモーラー奏法普及プロジェクトを始めてからは、「身体の根元側から動かす」という概念がわりと一般的になり、皆さんもどこかで耳にした事があるのではないか?と思います。
もちろんそれは、モーラー奏法の基本中の基本ではありますが、このブーストストローク2では、逆の順番、つまり末端側から先に動いてOKです。

詳しくはこちらをご覧下さい。

動画:末端から動かす方法

 このようにスタートポイントからミドルポイントまでは手首や肘で振り下ろしていき、ヒットの前に肩甲骨を引いてブースト(加速)させるわけです。

 この エネルギーの変換加速 の様子を、わかりやすく、スティックにキャップを付けたり、ムチでも検証していますので、ご覧下さい。

動画:スティックにキャップをつけて検証
動画:ムチを使って検証

 いかがでしょうか?
 エネルギーの方向がドラムに向かい、ブーストもされる事で、おもちゃのムチでもフロアタムが簡単に鳴らせてしまうのです。

<ブーストストローク2の注意点>

ブーストストローク2では、手首や肘などの「末端側が先に動いてもOK」とここまでお伝えしているわけですが、手首のスナップを効かせすぎたり、肘で強く振ったりは決してしないようにして下さい。(目安としては手首や肘を振った時に肩がゆれていたらNGと考えて下さい。)
試しに肩がゆれてしまうくらい肘を強く振ってみて下さい。それだけ反動がきている状態では、とてもではないですが肩甲骨は動かせないと思います。
それをふまえてコチラをご覧下さい。

動画:末端から動かすときの注意点

いかがでしょうか?
無理にやると身体を壊しかねない事や、指でほんのちょっと動かしているだけでも、肩甲骨の増幅によってパワーが得られたり、ブラシでもパワーが出せる事などがおわかり頂けたと思います。
末端側は自然落下かそれに近いくらいにして、しゃっ骨&とう骨の自然な回転を使えるようにするのが大切なポイントなのです。

   ※ しゃっ骨&とう骨についてはSTEP2ドラミングアドバイス第42回をご覧下さい。

   ※ 肩甲骨という言葉がピンとこない方はコチラ


■ ブーストストローク2の重要なポイント ■

・ブーストストローク2は末端側が先に動くので一見普通の叩き方に見えるが、実は肩甲骨を引く事で、エネルギーの方向の変換と加速を可能にするストローク

・末端側の動きを強くやると「エネルギーの逆流」が起き、肩甲骨が動かせなくなる。無理をすると身体を壊しかねないので充分な注意が必要


■SECTION7 《ブースト1、ブースト2 実演》

 それでは最後にもう一度、普通の真っすぐ叩く奏法、普通のモーラー、ブーストストローク1と2を使ってアーロン・スピアーズ風のフレーズを実演している動画をご覧下さい。

動画:アーロン・スピアーズ風の
フレーズで対比
実演:坂野上貴宏

 説明の都合上、ブーストストローク1と2に分けて解説、実演しましたが、実際は1と2をミックスして使うのが重要です。
また、肩甲骨から先に話を限定して解説しましたので理屈は簡単だったと思いますが、単発ではなく、速い連打や移動フレーズで使いこなすには古武術の技の原理、人体力学が必要になります。人体力学はコチラ
 ブーストストローク1もブーストストローク2も、下手にやると身体を壊しかねませんので、充分注意の上、取り組んでみて下さい。

STEP3 フル動画バージョンはこちらになります。