17. 呼吸法のメカニズム

近頃、当スクールの「ドラミング無料電話相談室」に呼吸法に関してのSOSが急激に増えています。いずれも呼吸法の練習をしてから「体が痛い」「リズムが狂う」「手足が動かなくなって以前よりもドラムがヘタになった」などのSOSです。

そこで彼らに、どんな呼吸法で練習しているのかを尋ねたところ、「クリックや8分音符に合わせて息を吸ったり吐いたりする」という、かなり勘違いな呼吸法を全員が練習していたのです。

つまり、「ドラミングの呼吸法」とはまったく異なる種類の「出産呼吸法」や「マラソン呼吸法」を安直にドラミングに応用しようとした結果、彼らのドラミング自体に異変をきたしてしまったのです。

そこで今回は超一流ドラマー達が行っている呼吸法のメカニズムについてふれてみる事とします。

一般ドラマーのドラミング中の「肺の空気換気量」は安静時の毎分200ml〜300mlの約10倍の3000ml前後にも達します。しかし、超一流ドラマー達は「体内を低酸素状態にする呼吸法」を用いて、ドラミング中の肺の換気量を毎分1000ml前後に抑えます。すると「血中酸素の欠乏状態」となり、発汗を伴いながら筋肉の緊張が解けて極端な脱力状態に入れるのです。

それと同時に今度は「脳内酸素の減少」が起こります。すると脳内で快感や怒りなどの情動や、本能的欲求を司る「大脳辺縁系や視床下部」から、モルヒネの6倍以上の快感作用の「脳内物質」が放出されます。そのため、気持ち良さを伴いながら音に対する集中力が一気に高められるのです。

また、その脳内物質は脳下垂体から血流に乗って全身にも行きわたります。その結果、通常は自律神経でしか行えない不随意筋(内臓筋)などのコントロールを自己の意思でも行い、その反動を手足の随意筋(骨格筋)に伝え、その先端にあるドラムスティックにまで及ばせているのです。

呼吸法メカニズム図

超一流ドラマー達は、「体内酸素量」「脳内物質」「不随意筋」「随意筋」のコントロールを呼吸法をきっかけとして作りだし、異常としか思えない音楽表現と集中力を発揮しているのです。

1998年7月